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北アルプス『焼岳』で火山性地震が増加!?焼岳登山と上高地への影響は?噴火警戒レベルとの関係解説!!

※この記事は2020年4月26日に更新しました。

 

2020年4月26日の早朝に長野県中部を震源とする地震があり、長野市や松本市で震度3を観測しました。

 

4月22日以降で、県中部の岐阜県境近くを震源とする地震は50回に達し、活発な状態が続いています。 

 

2018年の11月にもこの近辺で火山性地震が群発した時期がありました。


2018年の時は焼岳山頂付近で火山性地震が11月22日に61回観測されたほか、23日は2,000回以上観測されたとのことです。11月23日午後7時23分ごろにはマグニチュード1.8の火山性とみられる地震があり、岐阜県高山市で震度1の揺れを観測したとの報告が上がりました。

 

今回の地震について、長野県地方気象台は「「焼岳との関連性は現段階ではわからない」とコメントしておりますが全くの無関係ということはないのでしょう。

 

現在気象庁は焼岳の噴火警戒レベルについて「活火山であることに留意」を示す『レベル1』としています。

 

焼岳の現在の警戒事項等

 

今後、火山活動が急変する可能性もありますので、登山する際は、火山活動の異変に注意するとともに、山頂付近では突発的に火山ガス等が噴出する可能性がありますので、ヘルメットを着用するなどの安全対策をした上で、噴気地帯にはとどまらないでください。

 

気象庁ホームページより

 

 

気象庁は今後の火山活動の推移に加え、山頂付近では噴気や火山ガスの噴出に注意するように、と呼びかけています。

 

そして登山好きの人が結構気になるのが『上高地』、そして北アルプスの登山への影響ではないでしょうか?特に焼岳は『上高地』からも近いですので、焼岳の火山活動の活発化は上高地への立ち入り自体にも影響を及ぼす可能性を否定しきれないのではないと思われます。

 

ということで今回は、焼岳の火山の現状について、噴火警戒レベルの解説を交えながら、焼岳登山と上高地への影響に焦点を絞って説明していきたと思います!!

 

 

 

北アルプス『焼岳』とは?

 まずは『焼岳』についての情報をまとめていきたいと思います。

焼岳の基礎データ

『 焼岳』は飛騨山脈の主稜線上にあり、長野と岐阜の県境にまたがっています。標高は2,455mです。日本百名山に選定されています。別名『硫黄岳』とも呼ばれています。

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北アルプスの中でもアクセスがしやすく、拠点によっては日帰りでも登れる山なので、アルプス初心者にもおすすめの山です。登山シーズンは5月下旬~10月下旬ごろとなり、ハイシーズンは登山道が大渋滞になるほど人気です。

 

活火山としての焼岳

焼岳は常時観測対象の活火山です。焼岳火山群(割谷山、焼岳、白谷山、アカンダナ山)の活火山で、約3万年前から火山活動が始まり、現在でも数か所の小火口から水蒸気の噴気を上げています。

 

1915年には梓川側で噴火口が開いて大爆発を起こし、泥流が梓川を堰き止めたことにより、上高地の大正池が生まれたとのことです。

 

焼岳の活火山としての位置づけは?

日本には現在111の活火山が存在しているとされております。111の活火山のうち50の火山については、『今後100年程度の中長期的な噴火の可能性及び、社会的影響を踏まえ、火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山』ということで、気象庁では地震計、傾斜計、空振計、GNSS観測装置、監視カメラ等の観測施設を整備し、関係機関からのデータ提供も受け24時間体制で常時監視をしています。

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この50の火山は火山噴火予知連絡会』によって選定されており、焼岳も選定されています。焼岳の選定理由としては以下の理由です。

 

☆近年、噴火活動を繰り返している火山
・過去数十年程度の間、頻繁に噴火している
・100年以内の間隔でマグマ噴火を繰り返している

 

 

また平成15年1月に火山噴火予知連絡会によって発表された「火山活動度による活火山の分類(ランク分け:A~C)」においては焼岳はランクBとされています。

今後の噴火の可能性や社会的な影響が考慮されていないことから、現在、気象庁ではこのランク分けを使用していません。

 

※こちらの書籍にも焼岳の詳細について載っていましたので、よかったら参考にしてみてください。

『日本の火山 国内30の火山活動を検証する』

 

焼岳の『噴火警戒レベル』は?

上述した通り、気象庁では現在、火山ランクという指標は用いていませんが、その代わりに『噴火警戒レベル』によって火山の危険度を分類しています。

 

噴火警戒レベルは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」5段階に区分して発表する指標です。先ほど出てきた、常時観測対象の活火山50座のうち、41火山で運用されています。

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現在焼岳の噴火警戒レベルは「1」となっています。レベル1は以下のような対応をとることになります。

 

レベル:活火山であることに留意

火山活動:火山活動は静穏。火山活動の状態によって、火口内で火山灰の噴出等が見られる(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)。

住民等の行動通常の生活

登山者の対応特になし状況に応じて火口内への立入規制等

 

 

ということで、レベル1では一般人が何か対応を迫られることは特にありません。ただし登山道は場合によっては規制がされている可能性があります。こう見るとあまり重大そうには見えないかもしれませんが、噴火予報は困難な部分があるため、レベル1だからといって恐れが無く安心ということでは決してありませんのでご注意を。

 

噴火警戒レベルごとの、焼岳登山および上高地への影響は?

以下のサイトで上記の41火山について、噴火警戒レベルごとの対応がまとめられています。噴火口の規模、噴火口の向き、山の形状による溶岩の流れ出る方角等は山によって違うので、『噴火警戒レベルがこうだから、一律にこう対応する』ということはできませんので、各火山ごとにまとめてあります。

 

ということで焼岳の場合を見てみましょう。

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レベル1:特になし

レベル2:黄色点線内(火口から約1km)が入山規制、黄色の登山道が規制対象

レベル3:赤色点線内(火口から約2km)が入山規制、茶色の登山道も規制対象に追加

 

 

レベル2になると、山頂へ続く登山道が規制され、火口に近づくことができなくなります。レベル3までいくと上高地から続く登山道も規制対象になります。

 

 

また松本市が策定している『焼岳火山防災避難計画』にはさらに細かい対応について書かれています。

焼岳火山防災避難計画 松本市ホームページ

 

かなり細かいので、ざっくりと要点を整理しますと以下のような対応がとられることとなります。

 

レベル1:登山者への注意喚起

レベル2:焼岳登山禁止(6/8ルート閉鎖)、火口から約1kmは規制焼岳小屋の閉鎖

レベル3:焼岳登山禁止(7/8ルート閉鎖)、火口から約2kmは規制上高地立ち入り規制及び観光客退避

レベル4:避難勧告(自主避難)⇒岐阜県の蒲田川流域、高原川流域、長野県の梓川流域

レベル5:避難指示⇒岐阜県の蒲田川流域、高原川流域、長野県の梓川流域

 

 

焼岳と上高地への影響をまとめると以下のようになります。

 

・レベル2以上になると、焼岳登山がほぼできなくなる

・レベル3以上になると、上高地にも入れなくなる 

 

 

まとめ

登山は全て自己責任です。活火山を登る際は、噴火に遭遇してしまうという最悪の事態も登山者は覚悟していかねばいけません。 レベル1だからまだ焼岳に登れる、レベル2だからまだ上高地に行ける、まだ大丈夫、まだ大丈夫......という悠長な考えを持っているといつか本当に痛い目を見るかもしれませんね.....

 

気象庁のサイトをこまめにチェックしておくとか、噴火警戒レベルが上がった時の対応方法を把握しておくなど、少しでも生還する可能性を上げる努力をすることも、登山者の義務であるのではないでしょうか?